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「あー、あの隻眼クンだねぇ。 紅い目の気障ったらしい奴」
やはりな。
璃王は、セラの声のトーンが下がったのを感じると、確信した。
あぁ、こりゃ、はぐらかされる。
「残念だけど、教えられないな。
世の中、知らぬが仏とか言うだろう? まだ、知るべき段階じゃないんだよ」
そう言ったセラは、何かを知っている様だった。
セラは、ヴァルフォアが生まれながらに受ける呪いを受けずに生まれた。
その代償に、璃王の記憶の所有と、意識の共有の能力を持っている。
だから、璃王が何かを忘れていても、セラなら何か解っているんじゃないのかと思い、セラを訪ねたのだが・・・・・・。
璃王は、腑に落ちない様な顔でセラを見る。
実際、セラの回答は腑に落ちないし、璃王は納得しなかった。
「そんな回答でオレが納得すると思ったか? 教えろ」
「そう言われてもねぇ。 オレも、確証を得ない内は憶測でしかないから、そんな情報を売る訳にはいかないんだよ。
解るだろう? オレにだって、事情があるんだって」
璃王を諭す様に、セラは言った。
暫く、璃王は黙って、セラを睨む様に見る。
「ッチッ 解ったよ、じゃあな。
まぁ、多分、もうオレからは来ないけどな、こんな所!」
璃王は舌打ちすると、踵を返して、歩き出した。
セラはその背中を、ただ、見送る。
「レイナス・リグレット・・・・・・。 彼の情報はまだ、揃わないんだよ」
璃王の背中を見送り、その背中が見えなくなると空を仰ぎ、セラは1人、呟いた。
その手には、微かな木漏れ日を反射して光る、銀色のロケットが大切そうに握られていた。
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