第4楽章 神月明日歌─コウツキ アスカ─

12/12
前へ
/398ページ
次へ
「あー、あの隻眼クンだねぇ。 紅い目の気障ったらしい奴」 やはりな。 璃王は、セラの声のトーンが下がったのを感じると、確信した。 あぁ、こりゃ、はぐらかされる。 「残念だけど、教えられないな。 世の中、知らぬが仏とか言うだろう? まだ、知るべき段階じゃないんだよ」 そう言ったセラは、何かを知っている様だった。 セラは、ヴァルフォアが生まれながらに受ける呪いを受けずに生まれた。 その代償に、璃王の記憶の所有と、意識の共有の能力を持っている。 だから、璃王が何かを忘れていても、セラなら何か解っているんじゃないのかと思い、セラを訪ねたのだが・・・・・・。 璃王は、腑に落ちない様な顔でセラを見る。 実際、セラの回答は腑に落ちないし、璃王は納得しなかった。 「そんな回答でオレが納得すると思ったか? 教えろ」 「そう言われてもねぇ。 オレも、確証を得ない内は憶測でしかないから、そんな情報を売る訳にはいかないんだよ。 解るだろう? オレにだって、事情があるんだって」 璃王を諭す様に、セラは言った。 暫く、璃王は黙って、セラを睨む様に見る。 「ッチッ 解ったよ、じゃあな。 まぁ、多分、もうオレからは来ないけどな、こんな所!」 璃王は舌打ちすると、踵を返して、歩き出した。 セラはその背中を、ただ、見送る。 「レイナス・リグレット・・・・・・。 彼の情報はまだ、揃わないんだよ」 璃王の背中を見送り、その背中が見えなくなると空を仰ぎ、セラは1人、呟いた。 その手には、微かな木漏れ日を反射して光る、銀色のロケットが大切そうに握られていた。
/398ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加