13人が本棚に入れています
本棚に追加
弥王は、先天的に声に特殊な声質が混ざっており、歌う事によってその波を体内に送り込んで攻撃する事も治癒する事も出来る能力を持っている。
極稀に弥王が顔も知らない人間の夢に入り込めるのは、弥王とその人間の声にその声質があって、その波長が同調した時のみに限定される。
その為、弥王は名前も顔も知らなかった明日歌の夢に入り込み、更に声も聞く事が出来たのだ。
「まぁ、ご心配なく。 まさか、殺人マシーンとして育てようとは思っていませんし、戦闘訓練と言っても護身術程度の物です。
それ以上の技術は、本人が前線に出る事を望んで、本人に学習する意志がある事を確認してから教える事にしてますから。
本人が嫌がるなら、他の手を打つ事も考えていますし」
微笑んで言う弥王に、グレイは安堵の笑みを浮かべて、言った。
「そっか、それを聞いて安心したよ。
まぁ、弥王の事だから、そう言うと思ってたけど。
裏警察(シークレット・ヤード)辞めたくなったら、いつでも言ってね、明日歌」
最後の一言は、明日歌に向けられたものだ。
グレイが頭を撫でると、明日歌は嬉しそうに頬を紅潮させて、言った。
「はい。
でも、弥王様が居るので、弥王様が脱退するまで辞めるつもりはありませんし、私は死んでも弥王様に付いて行くつもりです」
「青春だね~。 弥王はモテるから、敵多いよ?
それで、弥王はどうすんの?」
明日歌の決意の込もった言葉に、グレイは弥王を茶化すように言った。
実を言うと弥王は、王宮に出入りする貴族の女子から人気があり、好意を寄せられていたりする。
そして、本人も大概、グレアに負けず劣らずな女好きである。
「茶化さないでください。 大体、オレは・・・・・・っ」
「解ってるって。 だから、そんな仏頂面しないの。
イケメン台無しよ?」
グレイの冗談を聞き咎める弥王の口元に、グレイの指が置かれ、グレイは弥王を見上げて言った。
その構図に、グレアは疑問を抱く。
グレイは確か、筋金入りの男嫌いだった筈だ。
グレイを見初めた貴族の男子が、グレイに近寄る度に彼女に切り捨てられていたのを何度も見ているので、解る。
その時にグレイ本人は「男風情がボクに近寄るな、虫唾が走る」と言っていた事もある。
ただ、気を許した人間が近付く事は平気らしいが、そう言う人間は片手があれば余裕で数えられる程だ。
最初のコメントを投稿しよう!