第5楽章 女王陛下

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弥王の言おうとした言葉も気になるし、大体、弥王とグレイの距離が近い様な気がする。 弥王の位置に例えば他の男が居よう物なら、グレイは光の速さでその腰に常備しているサーベルを引き抜いて、喉元に鋒(きっさき)を当てがうだろう。 サーベルの鋒より外側の範囲が、異性が近付ける範囲なのだ。 弥王に対しては特にそう言う事がない。 そればかりか、自分から普通に近付いて声を掛けたりしているし、弥王とはかなり親密そうな感じがある。 もしかして、こいつら、付き合っていたりするのか? グレアは、そんな事を考えた。 それはそれで有りだな・・・・・・! 神南なら、義弟になっても文句はないな、うん。 グレアは、楽しそうに話している弥王とグレイを見て、そんな事を思った。 いい組み合わせだ。 そんな事を考えて、それはないか、と、考えを白紙に戻す。 例えば弥王とグレイが付き合っているとして、さっきの弥王とグレイのやり取りが引っ掛かる。 「大体、オレは、陛下しか眼中にないです」と言おうとしたのなら、それを遮る必要もないものじゃないだろうか。 惚気が少しウザく感じるだろうが、遮る必要もない様に感じる。 そこまで考えて、グレアは弥王と璃王について、詳しくは聞かされてない事も考える。 神南(こうなみ)とグレイ、あるいは神谷(こうや)も知っていることで、私や神月(こうつき)に教えられない様な事があるとするなら? グレアは、夜会の辺りから考える様になっていた仮説のことを考える。 その仮説は、例えば弥王が女で、あの少女だとしたら? と言うものだ。 あの少女・・・・・・ミオン・ルーンも、生きていれば弥王とちょうど同い年だ。 その事を、夜会の時からグレアはずっと、考えていた。 弥王が実は女で、ミオンなら。 この仮説は有り得そうな気がする。 夜会の時までは気にしていなかったが、「神南弥王」として見るには、神南は酷くミオンと容姿も性格も、仕草や癖、口調、何を取っても似過ぎている。 それこそ、グレイではないが、ドッペルゲンガーの様に。 昔のミオンとの会話と、最近した弥王との会話を思い出しながら、グレアは考えた。 本当は本人に直接訊いた方が早いのだが、まだ弥王がミオンとは断定できないので、それを尋く事もできない。 グレアは、悶々と弥王の素性について考える。
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