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「でさ、聞いてる、グレア?
今、切り裂きジャック2世(ジャック・ザ・リッパー セカンド)の話してんだけど」
気が付いたら目の前に、額に青筋を浮かべて殺し屋の目で自分を睨んでいるグレイの顔があった。
右手をサーベルの柄に掛けている辺り、あまりボーッとしていたら、グレイに斬り捨てられそうだ。
グレアは応答する。
「あぁ、聞いているさ。 で、その事件に関係しているか解らない死宣告者が居るんだろう?
そいつの事は、こちらでも確認済みだ」
前に璃王が、「自分達以外の気配や視線を任務中に感じることがある」と、グレアに報告していた事があり、弥王と璃王には一応、警戒はさせている。
敵なのか味方なのか、今の所解っていないので手が出せないのだ。
「そう。 ──で、テーゼに調査させてたんだけど、ほら、テーゼには王宮の管理とかボクの補佐とか任せてるじゃん?
だから、あんまり王宮から離せないんだよねー」
「あぁ、あの男装癖持ちのナルシストか。
彼奴、まだ居たんだな」
グレイの話に出ていたテーゼ、と言う名前を聞いて、グレアの顔が真顔になる。
グレイの女執事で補佐であるテーゼとは、昔馴染みなのだ。
昔から、グレアとテーゼの仲は最悪で、顔を合わせる度に毒舌の応酬をしていたのだが、その話はまあ、いずれ。
「当たり前でしょ。 ボクの男嫌いを何だと思ってんの?
テーゼ居なきゃ、ボク死んじゃう」
腕を引き伸ばしたりしながら言うグレイに、グレアは嫌な予感を感じる。
別に、任務の追加なら問題はない。
嫌な予感の正体が、自分が思っているようなことじゃないことをグレアは願いながら、グレイの話を聞く。
「──で、その話は良いとして、テーゼとの話し合いで、その死宣告者怪しすぎるねーって話になってさー。 と、言うワケでグレア」
グレイは窓枠に移動しながら話すと、窓枠に手を掛けた。
そのグレイの行動で、グレアの嫌な予感は確信に変わる。
「大英帝国26代目国王(ボク)からの公式優先任務追加ね。
その死宣告者の調査及び拘束、場合によっては死刑」
「じゃあ、後は頼んだ」と言うと、グレイは窓から飛び降りた。
それを見た明日歌が驚愕に叫ぶ。
「あ・・・・・・! ここ、6階・・・・・・!」
明日歌の声は、遠くの空にハンググライダーで飛び立ったグレイには届かない。
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