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時間は戻って、璃王は十二支村(ドーディチ・ヴィッラッジョ)を出て、村の外れを目指していた。
目的の人物に会えたし、居座る理由もないのでリオルと合流してそのまま帰ろう。
今頃、暇すぎて寝ていそうだな、と思いながら、璃王は何もない所で私用に付き合わせた事を申し訳なく思う。
大した収穫もなかったし、ただの徒労に終わったな。
そう思うと、リオルに対する罪悪感が込み上げてくる。
折角の休みだったのに、悪い事をしたな、と。
「もしかして・・・・・・忌み子?」
リオルへの罪悪感でブルーになっている所で、不意に、背後から少年の声が聞こえた。
その声に璃王は舌打ちしながら振り返る。
「ちっ、またか。 今度は誰・・・・・・ッ!?」
「誰だ」と言おうとした言葉は、その姿を見て、途切れた。
璃王は、驚愕とも恐怖とも取れる表情をする。
暫くの沈黙の後に漸く、璃王は声を絞った。
「リ・・・・・・っ、リト・ヴァルフォア・・・・・・ッ!?」
「ふぅん、覚えてたんだ?」
後ろで三つ編みのお下げにしている青い長髪に、切れ長の藍色の左目と鳶色の右目が印象的な少年。
歳は、璃王の2つ上くらいだろう。
彼は、リト・ヴァルフォア。 璃王の遠縁の親戚である。
璃王は、顔を青くして、その場に固まる。
幼少の頃から、親戚関係には散々差別され、虐められていた。
その中でも、リトからの虐めは度を越して酷かったのだ。
その時のトラウマが未だに癒えていなく、璃王の中では死んでも会いたくない親戚の部類に入っている。
(リト・ヴァルフォア・・・・・・。
よりによって、イヤな奴に遭遇するとは・・・・・・。
他の連中もイヤだが、こいつだけは特に──)
どちらが喋るでもなく、無言がその場に流れる。
風に揺らされて擦れ合う樹々の音だけが、二人の間に流れていた。
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