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【六月二十日(土) 午後七時二十分】
「五年前、……妻と娘を、殺されたんだ」
僕の斜め前に座っている男性、向井雪雄が、とつとつと語りはじめた。両肘をテーブルについて、まるで祈るように、両手を顎の前で組みあわせている。
それは、これから起こることが成功しますように、と女神に首を垂れているようで、その思いの強さが、ひしひしと伝わってきた。
それに対して僕は、「事件に巻き込まれてしまったという事ですか?」と、無表情のままこたえてしまう。
「妻と娘は、車に轢き殺されたんだ。小さな躰……、柔らかい手……。私の幸せが、硬く、冷たくなって、動かなくなったんだよ。その車を運転していたのが、当時、未成年だった、こいつだ」
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