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雪雄が、黒いスーツの内ポケットから写真を取り出した。
それをテーブルの上に、投げるように置く。それは、汚らわしい物を捨てるようだ。比較的に新しい写真で、その表面は照明の光を反射している。
写っている若い男は、ベリーショートの髪を茶色に染めていた。優男だ。細身の躰で、身長も高そうだった。その写真は、隠し撮りかも知れない。僕がそう感じたのは、若い男の視線が、カメラの方を向いていなかったからだ。
「中島龍之介。事故を起こした当時、こいつは十八歳の少年だった。五年経った今は、二十三歳になっている」
そこで、雪雄が双眸をゆっくりと閉じた。
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