CLOUD NINE

3/342
前へ
/399ページ
次へ
 雪雄が、黒いスーツの内ポケットから写真を取り出した。  それをテーブルの上に、投げるように置く。それは、汚らわしい物を捨てるようだ。比較的に新しい写真で、その表面は照明の光を反射している。  写っている若い男は、ベリーショートの髪を茶色に染めていた。優男だ。細身の躰で、身長も高そうだった。その写真は、隠し撮りかも知れない。僕がそう感じたのは、若い男の視線が、カメラの方を向いていなかったからだ。 「中島(なかじま)龍之介(りゅうのすけ)。事故を起こした当時、こいつは十八歳の少年だった。五年経った今は、二十三歳になっている」  そこで、雪雄が双眸をゆっくりと閉じた。
/399ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3365人が本棚に入れています
本棚に追加