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組みあわせた両手に、力を込めているのだろう。その血流が滞ってしまうほどに、感情を抑え込もうと、必死なのかもしれない。
「材料を買い終えた二人は、家に帰ろうとして、近所の交差点を渡っていた。そこに、こいつが運転していた車が突っ込んだんだ。食材はアスファルトの道路に撒き散って……、そこにはブレーキ痕さえなかった。妻と娘は、即死だったよ」
僕は、「……ひどい」と、その悲しみに同調するように視線を落とした。
「こいつの父親は資産家で、すぐに優秀な弁護士が登場した。そして、未成年だったこいつは、保護観察になっただけで許されたんだ。五年が経った今、こいつは普通に生活して、まるで何もなかったかのように車の運転までしている」
雪雄の眉間に、うっすらと皺が寄っていた。
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