CLOUD NINE

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 雪雄の気持ちが、よく分かる気がした。もし、彩乃を失ってしまったら? 僕の時計は壊れて、永久に動きだす事はないだろう。 「娘は、まだ三歳だった。ほんとうに可愛らしくてね。おしゃべりも上手に出来るようになって、成長が楽しみだったんだ」  その年齢が一番かわいいと、子供を持つ親たちがよく言っていることを、僕は思い出した。 「笑われるかもしれないけれど、大人になった娘と並んで歩くことを、想像したりもしてね。きっと、綺麗な女性になっただろう。成長した姿を、一目だけでも見てみたかった。家族三人で、夜の散歩もしてみたかったよ……」  僕は、ただその表情を見つめる。
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