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「お金や享楽は、一時の喜びしか与えません。本当の幸せは、愛しか与えることが出来ないのです。彼は、それに気付くのが遅すぎて、一番大切なものを失ってしまった……」
そう言った後、神父は兄弟を真っ直ぐ見つめる。
「でも、貴方達は違う。大切なものが何であるのか、分かっているはずです」
神父の言葉に、幼い兄弟はゆっくりと互いを見つめ合い、それから自然に手を繋いだ。
それを見て、神父は静かに微笑むと、優しく二人を抱きしめる。
幼い兄弟が去った礼拝堂は、再び厳かな静寂に包まれた。
一人残された神父は、光に照らされた聖母を見上げる。
いつしか、その頬には、一筋の涙が流れていた。
「マリア……。君に、会いたいよ…………」
午後の穏やかな光が。
慈しむように。
ロイ神父の頬に伝う涙を優しく静かに照らしていた……。
fin.
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