アヴェ・マリア

9/12
前へ
/12ページ
次へ
どんなに疲れていても、聖母のような眼差しで、青年に優しく微笑みかけながら……。 そんな毎日を過ごす中で、青年は不思議な気持ちを感じ始めていました。 以前のように遊び回っても、どこか心が虚しく、何をやっても上の空。 青年は、それがなぜなのか分からないまま、相変わらず毎日遊び歩きました。 そんなある日のこと。 いつものように、仕事から帰って来たマリアは、青年の目の前で、突然、倒れてしまいます。 驚いて駆け寄った青年の腕の中で、マリアは小さく言いました。 「ごめんなさい、ロイ。私、少し疲れたみたい……」 力無くマリアは微笑みました。 よく見ると、最初に出会った頃よりも、彼女の体は痩せて細くなっていました。 その瞬間、青年は気付いたのです。 本当に自分が欲しかったものが何であるのかを……。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加