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もうひとの姿ではないキャロラインは口に一本の古びた杖をくわえていた。
「さくやさま。杖をお持ちいたしました」
なんとネコの姿になってもキャロラインはひとの言葉を喋った。
「なによ。ちび猫ったら。ひとの言葉もはなせるんじゃない」
「うるさいです。アホ女。さあ、さくやさま……」
さくやさんは黒いコートの前裾をひるがえすとその古びた杖を手にとりなにやらジュモンをとなえ始めた。
「ああっ。さくやさんの杖の先端がひかり始めたぞっ
」
「シューマイ、コンソメ、サラダ、チャーシューメンチャーシューメンチャーシューメン……」
さくやさんは額に汗を浮かべてなんだか怪しいジュモンをくり返す。
「チャーシューメチャーシューメンチャーシューメ~ン!」
さくやさんが「きえー!」と奇声をあげた。
するとさくやさんの長い髪が風もないのにゆらり、と揺れた。
周二が叫んだ。
「ああっ。さくやさんがトランス状態にはいったぞっ」
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