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「汚くなんかないやい。汚くなんかないもん……」
吾郎が鼻を啜る。
さくやさんが吾郎に近寄り、言った。
「吾郎さん、そのネコさんまだ生きてますよ」
「さくやさぁん……」
吾郎は泣きべそをかいた。
「一緒に獣医さんまで連れて行きましょう」
さくやさんが水銀灯のようなほほえみを浮かべた。
※
獣医さんにちゃとらのノラネコを診せて入院させると辺りはすっかり暗くなっていた。
「弁当、冷えちゃったなぁ……」と吾郎は言った。
季節は冬で空気は残酷なくらいつめたかった。
さくやさんはそっと手を伸ばし、吾郎の指に自分の指を絡ませた。
吾郎はきょとんとさくやさんを見返した。
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