4章

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「さくやさん。あれおごってあげる。」 吾郎は黄色いランプが灯る自動販売機を指差した。 さくやさんはきょとんとハムスターのような黒く丸い瞳を更に丸くする。 「あれとは?」 吾郎がにっこりわらう。 「缶コーヒー。」 一本の熱い缶コーヒーをさくやさんに手渡すと吾郎は自分の分の缶コーヒーをもう一本買った。 ふたりは公園の赤いベンチに腰かけほほえみ合った。 「さくやさん。おいら、前にも言ったけど子どもの頃からみんなのどん尻にいて、いつも動物や植物にばかり話しかけてた。先生に意見を求められても嬉しくてもうまく話せなくて涙がでそうで。」 吾郎の瞳に透明な水がみるみるこみあがる。 さくやさんはしんとそれを見守った。
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