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吾郎は俯いて少し涙を浮かべた。
「……切なかった。」
ずる、と椅子から転げ落ちる幸芽である。
「さくやさんはおいらの腕のなかでどんなに丁寧に触られても決して満たされる事のない水滴が二、三てきのガラスコップみたいに。淋しげで儚げで。」
吾郎は目の前の発泡酒を一気に飲み干した。
「誰かの手をさくやさんの手をおいら握ってあげられる男になりたいなぁ。」
幸芽は濃いミントジュレップスをひとくち口に含むとにっこりとわらう。
「吾郎、お前男の子だなぁ。」
「えっ」
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