10人が本棚に入れています
本棚に追加
由依埜がまだ開く花をもたない草で出来た裏庭に行くとひとりの同級生が佇んでいた。
「うげっ」
由依埜は思わず男子のような声をあげた。
その少女はふんわり伸びた栗色の髪に小さなからだに不相応な長い手足を持て余すようにしている。
そして、シスターを思わせる礼服に似た制服を着ていた。
いっぽうの由依埜は少年のようなショートカットに水色の上下を着ている。
由依埜が何故毒づいたかというと根本的に由依埜はかくも上流階級、と言った人種を好まないのだ。
そしてその少女は厳しい冬の掟に護られた真冬の庭で一心になにかを祈っている。
かさり。
由依埜が草を踏みしだく音が聞こえて少女は顔をあげる。
「あなたは……」
「わたしは野川百代。貴方は?」
それが三上由依埜と野川百代の奇妙で切ない出会いだったのだ。
第二章.完
最初のコメントを投稿しよう!