第三章

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第三章

「ふえーっくしゅ!」 三上吾郎は盛大にくしゃみをした。 吾郎たちの住むアパートのある町に大雪が降った日の朝だった。 雪かきをしていた吾郎は鼻をすすった。 たちまちキャロラインの平手打ちが飛ぶ。 「吾郎のクソばか!手を止めるんじゃありませんよっ」 「ご、ごめんよぅ。キャロラインちゃん……」 吾郎は打たれた頬をさすりもせず涙目でキャロラインに詫びた。 すると、とたんにキャロラインが幼い頬を真っ赤にする。_ 「わ、わかってればいいんですよ。ま、まったく吾郎のクソばかは……」 キャロラインはどもっている。どうやら初恋のようである。 「ちょっとちょっとひとのお兄ちゃんつかまえてクソばかはないんじゃないの。ちび猫」 「あっ。由依埜~♪」 由依埜は差し入れのホットドックとアメリカンコーヒーの入った紙袋を示すと吾郎に笑みを、キャロラインに渋い表情を浮かべた。 キャロラインは喚いた。 「吾郎のクソばかなんてクソばかで充分ですよっ。そっちこそなんですか。ちび猫とはっ」 「そうですよ。言い過ぎですよ。キャロラインさん」 魔女を連想させる黒いコートを着てさくやさんが姿を現して言った。そして、周二も一緒である。周二が心配して言う。 「吾朗ちゃん、平気?風邪でも引いたんじゃない」 吾朗はその貧相な顔いっぱいに笑みを浮かべる。
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