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親父と会ってから、しばらくして、宇野さんから連絡があった。
あの日は、ほとんど話にならなかった俺たちの代わりに、宇野さんがこまごまとした話をしてくれたらしい。
"ああ、また、お世話になってしまった"
と、思うと、本当に、どうやってこの恩を返せばいいんだろう、と、思ってしまう。
どうも母親の保険金が、思ったよりももらえたらしく、それを俺の生活費として毎月支払ってくれるらしい。
そしてやっぱり、あの家は売りに出すらしく、そのお金も一部は俺に、という話をしているらしい。
なんにせよ、生きていくには金がいる。
少なくとも、俺が働き始めるまでは、親父の世話になるしかない。
「あの家を売っちゃうなら・・・母さんの仏壇はどうなるんだ・・・」
あの親父が、新しい家に、それを持って行く姿が思い浮かばなかった。
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