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夏休みが終わっても、当然のように居座る暑さが、9月の終わりくらいまで続いていた。
それでも。
青く澄み切った空が、少し秋を予感させ始めた頃。
要の母親が死んだ。
『たぶん、私、もうそんなに時間がないと思うの』
前に病院で言っていた言葉を思い出す。まさか本当にそうなるなんて思わなかった。たんに、少し気弱になってただけじゃないかと思ってた。体調が急変したと、連絡があったのは学校の授業中のようだった。
俺のところに、その情報が届いたのは、昼休み。朝倉と、教室でコンビニで買ってきていたパンを食い始めようとした時。
ヤスくんが飛び込んできた。
「こ、鴻上先輩っ!か、要が、要がっ」
「・・・落ち着こうか、ヤスくん」
顔を真っ青にしながら、何か言おうとしてるのに、言葉が出てきてくれないようで。
"要"の名前が出てきた時点で、俺だって冷静にはなれないけれど、落ち着いてくれなきゃ、話もできない。
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