4.甘くて、甘くて、苦いもの

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できるだけ柊翔の勉強の邪魔にならないように、元旦の夕方には、さっさと自分のアパートに帰って来た。 殺風景な部屋の中は、正月らしさのかけらもない。 戻ってすぐにしたのは、仏壇に新しいお茶と線香をあげること。 「ただいま。」 一人で仏壇に向かっていると、自然と涙がこぼれてしまう。 ああ、俺、まだまだ、ダメだなぁ。 「母さん、ごめんね。泣き虫で。」 涙をぬぐっていると、スマホにメッセージの着信があった。 ・・・柊翔? 『今、どこ?』 『アパートに戻ってる』 『これから、行く』 なっ? こっちは、勉強の邪魔になると思って、引き揚げてきたというのにっ。 『勉強は?』 『正月三が日くらい、しなくても大丈夫』 そ、そういう問題じゃないだろう!? 『これから、買い物に出るから』 それだけ送ると、俺は急いでアパートを出た。
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