4.甘くて、甘くて、苦いもの

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「朝倉たちには、まだ話してない。俺と潤で話しただけ。だから、まだ決まった話じゃない。」 テーブルの上のチョコレートの箱の包みを剥がしだした。 「でも、あいつらが、少しでも要を守ってくれるんだったら。」 蓋をあけると、小さなチョコレートが並んでいる。 「俺も、卒業してから、心配しないですむ。」 一粒つまむと、俺の唇に押し当てる。 「口、開けて。」 口の中に放り込まれたチョコレート。カリッとかむと、甘酸っぱいベリーの味が広がる。 「美味しい?」 指先に、少しだけ溶けたチョコレートを舐める柊翔に、目を奪われてしまう。 「・・・うん。」 「俺の見える場所で、あいつらとイチャイチャされたら嫌だけど、卒業してからなら・・・我慢できる・・・かな。」 そう言って、優しく唇を重ねる。 甘い甘いチョコレートなのに、どこか、苦く感じるのは、これからのことを考えてしまうせいかもしれない。
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