2.恋しくて、恋しくて

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俺は今、宇野さんが連れて来てくれたマンションにいる。 もともと、亮平が転校するまで、亮平一家が住んでいたマンション。 「……広すぎる」 一人ポツンといるリビングには、でかいテレビと、すごい座り心地のいいソファ。 名前は知らないけど、きっと有名な人が描いたんだろう、と思う様な、大きな絵画が飾られている。 いつでも、住めるような状態になっているこの部屋は、なんのためにあるんだろう。 「一人で住むには、広すぎるかもしれませんが」 そう言いながら、コーヒーを持ってきてくれたのは宇野さんの部下の坂入さん。 さっきまで車を運転してくれた人だ。 宇野さんよりも、少し年下なんだろうか。 宇野さんが頭の切れるデキル男という感じなのに対して、坂入さんは中性的で柔らかい印象で、とても優しそうに見える。 「……今は、落ち着くまで、ここから学校に通いましょう」 優しく微笑むと、目の前にコーヒーカップを置いた。
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