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思い浮かぶのは、あの夏の花火大会の帰り道。おじさんと、誰かはわからない若そうな女。二人が楽し気に歩いている姿は、見間違いじゃなかったんじゃないか。今更ながらに、あの時、捕まえて確認すればよかったんじゃないか、と後悔している。
俺は家に電話をかけた。
「あ、母さん。急いで、病院に来て。要のお母さん、やばそう」
それだけ言うと、俺はすぐに要の元に向かった。おじさんが、有給休暇使ってる話は、絶対に言えない。
病室は、先ほどと変わらない。ただ、おばさんが、眠りにつくのを見守るしかできない。真っ赤な目をした要が、じっとおばさんを見つめてる。
おばさんは、浅い呼吸を何度も何度も繰り返していたけれど、段々と、そのペースも遅くなり……。
"ピー"
おばさんは、遠くに旅立ってしまった。
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