第1章

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何処へ行くかも宛もなく、人が行き交い、静まり返った街を歩いていく。 「ねぇ、君も何かなくしたの?」 目の前に現れたのは学生服の少年だった。 久々に聴こえた声はまだ幼さが残る優しいもの。 「――――――――?」 あぁ、情けない。 『――貴方は誰なの?』そう言ったはずなのに、いつの間にか自分の声も軽くなって、耳に届かない。 だから、この声が彼に届いているのか心配だ。 「誰って、君と同じでなくした者だよ」 まず、声が届いていたという安心感と大量の質問が溢れてきた。 『貴方も言葉の重みをなくしたの?』 「違う。僕がなくしたのは“色”だよ」 『――色?』 色というのは、そのまま赤や青、緑などの色なのか? .
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