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分裂
夫の視線が突き刺さる。安富のことバレちゃたのかな?まっ、まさか?探偵でも雇ったのかな?
マッ、マズイぞ。夫は普段は優しいが、キレると大変なことになる。
結婚するまえに神田にあるレストランに行ったのだけど、ポトフに蝿が落ちていたことがあった。誰もいないのをいいことに、店主をボコボコに殴って慰謝料1万をもらった。その金でラビリンスに行ったのだ。警察沙汰にならなかったのは、不幸中の幸いだ。
「私だって、たまには息抜きがしたいのよ!」
「何も泣くことはないだろ?バイオハザード、たまには僕にもやらせてくれよ」
頭の中が真っ白になった。脳梗塞になった小渕首相状態だ。「………」えっ、そっち?
「ねぇねぇ、ラビリンスってなーに?」
「冴子、あんたはだまってなさい!」
おまえ~!どれだけ腹を痛めたと思ってんだ!漸く、逃げられると思ったのに!
「ママこわーい、おかしいよ!いつものママじゃないよ!バイオのやりすぎだよ!この、タイラント!」
私が、いつ暴力奮ったのよ!もう、窒息しそう。
冴子が泣きながら階段を上がっていく。
「GWなんて派遣にはねぇんだし、少しは働けよ!うちの工場にもさ、おまえより年上の女がいっぱいいるんだよ!バイオばっかやってるから、ラビリンスが見えるんだよ!何にもやらねぇな!」
よし、いいぞ!ラビリンスは、迷宮。
「ごめんね?うん、働くわ!あのゲーム難しいからねぇ、realityもあるしさ?最近、あなたがゾンビに見えるわよ。腐ってんなよ?派遣だっていいじゃない、あっ、あなたはあなたよ」
我ながら怖くなった。私には詐欺師としての素質があるんじゃないか?
「そうだな、腐ってる場合じゃねぇな。社員になれるよう、掛け合ってみるぜ!」
「そうよ、あの優秀なお祖父ちゃんの孫でしょ?」何を隠そう、彼は葛城仙三郎っちゅう作家の孫なのだ。
「俺はクズじゃない!」夫の人格が豹変する。「俺の名前はクズシロじゃない!」
包丁をクルクル回して、見えない敵に突きつける。「俺はカツラギレツだ!」
葛城烈、それが夫のナマ、じゃない(もう、私ったら馬鹿!)名前だ。
「ウォォォォッ!」
「分裂してんな、アホ!」
私は夫に飛び下痢を喰らわせた!
ミスった!飛び蹴りだった!
「よーし、今からディズニーシーに行こう!」
violenceな家族。でも、私は大好きだ。
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