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5、初メテ
三月中旬の土曜日。
ガラス窓の向こうでは忘れ雪が舞う、昼過ぎのカフェ。
私はそこで当時交際をしていた二つ年上の男性、〝久保さん”と会っていた。
と言っても、付き合い始めてからまだ三か月程で、やっと先週初めて、私は彼とベッドを共にした。
そんな彼から、
〝今の会社を辞めて、友達と事業を始めようと思うんだ”
〝資金の面でちょっと今困っていて……百万円程必要なんだけど”
〝貸してくれないかな?”
そんな相談を受けたのは、二日前のことで、
「用意してくれた?」
「う、うん……」
「月曜日までに用意出来ないと不味かったから助かるよ……来月にはちゃんと起業資金を銀行から融資をしてもらって、その分で繭子に返すから」
「うん……」
待ち合わせをしたカフェの隅の席で、相談された金額を彼に渡そうとしていた。
バッグから封筒を取り出し、手渡そうとした瞬間、
「お姉さん、ちょっとストップ」
私と久保さんの間に、いきなりそんな声が割って入ってきた。
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