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「本城先生」
そっと開けた生物準備室のドア。
本城先生は私に気付くと、振り返ってにっこり笑った。
「詩乃」
笑うとますます垂れる、眼鏡の奥の目。
……そこが好きだって云うと拗ねるけど。
「チーズケーキ焼いてきたんですけど……。
食べますか?」
「うん。
じゃあ、コーヒーを淹れよう」
先生はご機嫌に、鼻歌交じりにコーヒーを淹れ始めた。
本城先生は……私の彼氏、だ。
もちろん、付き合ってることは誰にも内緒だけど。
――バレンタイン。
好きです、冗談めかして笑って誤魔化し、先生に差し出したチョコ。
でも先生は。
「君にそんなこと云われると、本気にしたくなるでしょ」
いつもの微笑みが消えて、真剣に私を見つめる先生。
思わず見つめ返すと、ふっと笑われた。
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