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「きっと……」
「諦めさせようたって、無駄です」
レンズの奥の瞳が、泣き出しそうに歪む。
「……諦めてくれないんだ」
「だって、先生、……私のこと、好き、ですよね……?」
震える手でそっと、先生の白衣を掴んで見上げる。
泣いてるように見える先生の、顔。
「……うん。
有沢が……好きだ」
先生の手が背中に回って、……ぎゅっと抱きしめられた。
「最低だよね、教師の僕が生徒の君が好きだなんて」
「最低だなんて思いません」
「君が思わなくても、世間はそう思うんだよ」
震えてる、先生の声。
震えてる、先生の手。
……ああ、そうか。
生徒の私が先生のことを想う以上に、先生が生徒の私を想うことはきっと、つらいことが多いんだ。
なのに先生は私のこと、好きって云ってくれて。
そう気付くと、たまらなく先生のことが愛おしくなった。
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