リアル

2/3
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
昨日、親友が結婚した。 それはそれは仲の良い友達だった。挙式の時に初めて彼女の旦那を見たが、とても人の良さそうな雰囲気の人だった。きっと彼なら彼女を幸せにしてくれる、わたしはそう心から思った。 かく言う私は先週、失恋をした。相手は私よりも一回り以上も年上の人だった。彼は私に心を見せてくれた。私が喜ぶことをたくさんしてくれた。家を空けることが苦手な私をプーケットへ連れてってくれた。それはそれはいい旅だった。何もかもが初めてな事ばかりの私を優しくエスコートしてくれる彼をとても頼もしいと思った。真夏の国で彼と過ごした時間には微塵もストレスを感じさせなかった。 私は彼を愛していた。こんなにも歳の差があったにも関わらず、私は彼を愛していたし、私も彼を喜ばせたくて自分ができる範囲で心を尽くした。 でも、終わってしまった。細かな理由やきっかけはいろいろあるが、簡単に言うと彼にとって私は重荷でしかなく、また、私を本気で愛せなかったことであろうと私は思っている。そう、私は彼に振られたのだ。別れ話をされても受け入れることができなかった。なかなか会うことができなくても、連絡がなくても私は彼を愛していたし、彼のいない生活が考えられなかったのだ。 だから私は彼の考えを変えたくて、別れ話に対して抗った。折衷案を提示したかった。でも、彼の考えは変わらなかった。 意外なことに私が彼との別れを受け入れるのには時間はかからなかった。なぜなら私は運命を信じているからだ。本当に結ばれるべき相手ならば、もう一度巡り会うことができると信じている。これを明晰な知り合いに話すと「別れに対する正当化」だと言われたが、一方で結ばれない相手ならば、どんなに愛し合っても二人の人生が交わることはないと諦めてもいるのだ。 心にぽっかりと穴が空いてしまった。彼の存在は私の中でいつの間にか膨らんでいたのだ。一回り以上も歳が離れているのに、また、私にとっての彼は憧れの存在でしかなかったはずなのに。結ばれるはずのない二人だと知っていた、わかっていたのに。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!