第1章

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左側に海... 海岸線を少し歩き砂浜に下りる。 海辺で遊ぶ親子。 犬の散歩をする人。 砂浜にシートを敷き横に大きな荷物を置き海を眺める女性。 眺める先にはサーフボートの上に座り波を待つ人や ウインドサーフィンをする人たちが海に浮いている。 その中にあの女性の連れが居るんだろー なんて思いながら女性の後姿を見ながら歩く。 空を見上げる。 天気もいいから空も真っ青で綺麗だ。 海風がとても心地いい。 立ち止まり光る海を眺める。 あの人も一緒に来れたらよかったのになーって溜息がでた。 のんびり、ゆっくり歩き砂に足跡を残しながら歩く。 砂浜を歩いていると道路のバス停が見えてくる。 次のバスに乗る為に歩道に上がる。 しばらくバスに揺られ 霊園前でバスを降り近くの小さなお店で花を買う。 母が眠る場所は大きな霊園内の高台の区画。 眼下には先程の海が大きく広がる。 母が亡くなりお墓を購入する際  母の兄妹たちはもっと近くの現代的な物でいいと言っていたと聞いた。 義父だけが少し遠いが海の見えるこの場所が気に入り 母のために建てたと だいぶ後になって聞かされた。 亡くなって数年は電車、バスを乗り継ぎ三浦まで来るのが面倒に思った事もあった。 でも 義父が決めた通り ここでよかったのかもしれないと...この頃は思う。 電車に揺られ、わざわざ来るのも悪くは無いと思える。 母の前に立つと供えたばかりの生花と火の点いたお線香... 僕はキョロキョロと辺りを見る。 少し離れたベンチ。 海側に向かって座る見慣れた後ろ姿を見つけて僕の顔が綻び 少し鼓動が速くなるのを感じる。 手にした花を既に供えられた花の隙間に少し強引に差し込み 手を合わせて目を瞑る。 母さん... 僕は大丈夫だよ。 僕はひとりじゃないから... 心の中で そう母に話す。 ゆっくりと目を開け ベンチに向かって歩いていく。 少し手前で声を掛ける。 「和弥。来てくれたんだね」 和弥は振り返り 兄さんって呼べよって薄く笑った。
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