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 コーラをひとくち飲んで私はたずねた。 「それって生まれたときからそうなの。」  彼は戸惑うこともせず、ほほえみながらさらりと答えた。 「そうだよ。まぁ気づいたのは小学校のときなんだけどね。」  初夏の公園は、眩しいほど明るいみどりの光を木々から放っていた。空は青く、地面は白かった。そんな場所のベンチにふたり座っていた。 「じゃあ・・・じゃあね、そのうちとうめいになっちゃうんじゃない。」 「うん、いつかは分からないけれど。このまま体が透けていったら最後は綾香ちゃんの言うように透明になって、それで消えちゃうんだと思うよ。」  私はひっしになって考えて、また上を見て言った。 「消えるってどういうことなの。」  彼は不意をつかれたというふうな顔になって、自分の手のひらを見て、それからしばらく空を見上げていた。からりと乾いた風が私たちの周りを吹きぬけていった。 「それが僕にも分からないんだ。自分が消えちゃうってどんな気持ちなんだろうね。」  私たちはなにも言わないで、木の影でできたまだら模様が足元で踊るのを見ていた。風がふくと忙しく騒ぎ出し、吹き過ぎるとまたもとに戻った。それをずっと繰り返していた。  それから、また彼に話しかけようと思い、顔をあげると彼はいなかった。いなかったのだ。そこには彼の靴の跡がまだ残っていた。
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