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自分以外のモノに一番大事なモノを断言されるのはおかしな気になるが、それでも俺は氏神の言葉に頷いた。確かに俺に取ってお嬢は一番大事だ。俺に実体を与えた影響は大きい。それ以上に、俺とお嬢はもう何百年も共に居て、俺にはお嬢が消えるなどと言う事すら考え及ばなかった。俺が消滅する事はあっても、お嬢が消えるとは考えた事がなかった。それは俺に取ってとんでもなく恐ろしい事だ。
「あんたが説教ばかりするから辛気臭い気分になった。出かける。またな、氏神」
何百年も存在していたモノが消える時は多分、ない。もしあるとしたら、天変地異位の何かが起こるだろうと思う。そんな事は考えたくもない。
俺はビルの非常階段を降りて氏神と別れた。ビルを出ると既に逢魔が時だった。俺が気付いたらお嬢は既に出かけていなかった。俺はいつも通りに一人で街を宛もなく歩く。いつもなら顔見知りの人外や知らない人間の女に適当に声をかけるのだが、氏神の「構われたがる」と言う言葉が頭を掠めた。社交的なだけだと自分では思う。必要以上に構われに行っているつもりはない。
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