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どうにも、氏神の話が説教臭かったので俺は街を歩きながらも何かに声をかける気にもなれなかった。
「おい、妖刀。今日は随分と機嫌が悪いな」
道端で古風な着物姿の女が俺に声をかけてきた。美しい女の姿だが、蛇の妖怪・清姫だ。俺は清姫の言葉も無視して前を通り過ぎた。後ろで清姫は喉を鳴らすだけで笑っていた。
「お前の主がつれないのかい?あの主の思いなんてあんたには解らないだろうねえ」
「あんたにはお嬢が解るって言うのか?」
挑発にも似た清姫の言葉に俺は振り返った。
「そりゃあ、同じ女だからね。解らないでもないよ」
清姫は妖艶な笑みでそう言う。人外でも性別は確かにある。
「あの主は難しいだろうけどねえ」
「……どいつもこいつも、今日は説教臭いな」
俺は溜息をついて呟いた。
「女に気をつけるんだね、妖刀」
からかう為だけに声をかけてきたのか、清姫は意味深な美しい顔でそれだけ言うと、踵を返した。そのまま、清姫は人混みの中に消えていく。実体はないから本当にすぐに消える。清姫の言葉の意味が俺には理解しきれない。女遊びの事を暗に窘められているのだろうか。今更?
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