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俺は清姫の言葉をさして気にせずに、再び歩き出した。別に何処に行くわけでもない。人間の様に働かなくてはならない訳でもないし、食事をしなければならない訳でもない。そう言った欲求は人外のモノにはない。言うなれば暇つぶしだ。お嬢が中学生を眺めるのを娯楽にする様に、俺は適当な女に声をかけることを娯楽にする。無防備だったり、節操のない女だった場合はそのまま美味しくいただく。快楽は別に感じないが、腕の中の女の表情が変わるのが、俺には面白い。
逢魔が時から、更に日が落ちて夜になった街には日にちに関係なく、人が増える。車のライトと店の明かりとで不自然に明るい夜は俺は嫌いではない。夜になると、昼間は影を潜めていた人外も闇に紛れて出てくる。俺に取っては、夜の方が昼間よりも賑やかしい。街に溢れる人間と人外の化け物。
「ムラマサ!ねえ、ムラマサでしょ?偶然ね、昨日別れたばかりなのに、また会うなんて」
後ろから声をかかる女の声に俺は振り向いた。化粧をした、ふんわりとした長い髪の女。見た事がある様な気もするし、気のせいかも知れない。しかし、俺の名前を呼ぶと言うことは、一度位は抱いているかも知れない。
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