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ー好餌ー
和葉のマンションに向かうまでに買い物に付き合わされ、たどり着いた和葉の部屋では手料理とワインでもてなされた。そう言う、人間の恋人同士がする様な事を俺は初めてされた。一晩限り抱くだけの女は俺にそんな事をしない。
和葉は楽しそうにして、どうやら本当に偶然また会った俺を歓迎している様だった。食事が終わっても、俺に抱く事を要求してこない。
「どうしたの、ムラマサ。黙り込んで」
ソファに座る俺の隣に来た和葉は俺の片手に手を添えて顔を覗き込む。覗き込む目がいやに艶やかに見えて、俺は吸い込まれる様に唇を重ねた。言葉ではなく、行動で要求するのか。解りにくくて面倒臭い。
「私、ムラマサにまた会えて嬉しいのよ。離したくないわ」
意味をなさない言葉を和葉は俺の耳元で囁く。唇を重ねると、和葉の腕が俺の首に回った。結局は、抱けと言う事だろう。
「……もう離さない……」
和葉が囁く声までは覚えているが、その後どうしてだか俺の意識は途切れた。
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