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俺が化け物に喰われるのはいい。俺が一人きりであったら、それでも構わない。でも、俺がここでやすやすと喰われてしまったら、お嬢が一人残される。誰にも心を開かないお嬢一人を残して、俺が勝手に消滅するのは悔やまれる。
「……お嬢……」
化け物の視線も何もかもどうでもよくて、最後に残った力で俺は呟いた。お嬢に寄って生かされていたが、関係ない化け物に喰われる悔しさはなかった。お嬢を一人にしてしまう悔しさの方が膨れ上がった。
「……呼んだ?村正」
幻聴かと思った。お嬢の声が俺に聞こえた。
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