14人が本棚に入れています
本棚に追加
妖怪か。意識が戻って見回した場所は俺とお嬢が住み着いているのと大して変わりないような、使われていない殺伐とした部屋だった。繋がれているお嬢の手のひらから、力が伝わって、体を起こす位には俺は回復する。
「お嬢、どうして俺を助けたんだ?」
「……村正が呼んだから」
「じゃあ、呼ばなかったら俺は喰われてたか」
俺とお嬢の力の差は歴然としているが、それでも幼い少女の姿のお嬢に俺が助けられたのは情けなく思う。
「……呼ばなくても来たよ」
少しの間の後、お嬢はぽつりと言った。
「村正は私が消さない」
俺が唖然としてうずくまったままお嬢を見上げると、幼くも美しいお嬢はしゃがみこみ小さな体で俺を抱き締めた。
「村正は私のものだから」
表情は変わらないが、お嬢の頬には涙が伝っていた。俺はお嬢を抱き締め返して、子供にする様に髪を撫でた。口調も表情も変わらないが、お嬢の言葉は俺に染み込んでようやく求めた言葉を貰えた気がした。
最初のコメントを投稿しよう!