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美月を連れて実家の門をくぐったのは、それから一時間後のことだった。
こんな時間にどうしたのと騒ぐ浩二の母と、その後ろから父が顔を出す。
玄関で簡単にわけを話すと、父も母も表情をなくした。
いくぶんか冷静さを取り戻した美月が、リビングで健吾の手紙と離婚届を取り出す。
それを眺めながら、その場の全員が、しばらくの間なにも言葉を発せられなかった。
話し合いは夜が明けるまで続き、日が昇るころ、とりあえず体を休めようと、父と母、それに美月は眠りについた。
浩二は一旦家に帰った。
始発は動いていたけど、駅からマンションまで歩く気力がなく、途中でタクシーを捕まえた。
二日連続の徹夜で体はだるくて仕方ないのに、神経が昂っているからか眠気はない。
シートに体を預けて無意識に目を閉じれば、考えることが多すぎて頭痛がした。
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