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男は満足だった。
この目で人魚の舞を見て、儚く散る命の無惨さを目の当たりにしたのだから。
男はからっぽの水槽に入った。
男の人魚に対する夢は、尽きなかった。
しかし人魚は男を怨み、ささやかな仕返しをする。
男が水槽に入っている隙に、蓋を閉めたのだ。亡霊となった人魚の、ささやかな仕返し。
男は酸欠となり、死に至った。
その後。
流れた月日の分だけ、腐敗は進み。
男の家を訪れたのは警察と、不思議な青年だった。
青年の正体は探偵なのか。
いや、探偵ではない。
青年の正体は警察なのか。
いや、警察ではない。
ただの死体の愛好家だ。
しかしそんな事を言うと。
「違いますよ。僕は死体が好きなのではありません。死に至った経緯が、何よりも好きなんです」
と、彼は言う。
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