プロローグ

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パァンッ-。 鋭く空に響くその音が聞こえると地面を強く蹴り、飛び出す。 すると、私の瞳に映るのはいつもくすんだ赤茶のタータンに、目指すゴール地点の風景だけ。 誰かの背中が視界に入ることはなかった。 でも、いつも聞こえる風をきる音、ドタドタとかダツダツとか変な足音。 いつあたしにその頼りない小さな背中を見せてくれるのかと、 あたしがゴールした数秒後、ボサボサの髪を直しもせず悔しそうに唇を噛んでいるだろうその子に聞くために、振りむいた。 もう数えるのも面倒だったやりとりも、あれで最後だったのなら……。 もっと優しい顔をして、頭でも撫でてあげたらよかったな。
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