153人が本棚に入れています
本棚に追加
『……あ……出た』
随分と久しぶりに聞く瑞希さんの声。
俺は壁にもたれ掛かり、高鳴る胸を悟られないよう平然を装う。
「ふふ……一応授業時間ですよ」
『……でも、出たじゃん……』
「今は殆どの授業が文化祭の準備に当てられてて、暇だったからちょっと散歩してたんです」
『…………ふーん……』
「瑞希さんはお仕事じゃないんですか?」
『……休憩』
その拗ねたような声から、瑞希さんの心情なんて簡単に読み取れる。
「……そうですか、お疲れ様です。……ところで、俺に何か用事ですか?」
答えの分かっている問い掛けを瑞希さんに投げると、少しの間があって……
『……なんで……あれから、一度も……連絡して来ないの……』
あれから……というのは、俺が瑞希さんを抱いた日のこと。
あの日から今日の今まで、こちらから連絡することも無ければ、瑞希さんから連絡が来ることも無かった。
「……連絡する用事も、特に無かったので」
『……っ連絡くらい、いくらでも……する用事、あるでしょ……』
ムキになる瑞希さんが可愛くて、もっと……もっと苛めたくなる。
最初のコメントを投稿しよう!