第四章

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『……あ……出た』 随分と久しぶりに聞く瑞希さんの声。 俺は壁にもたれ掛かり、高鳴る胸を悟られないよう平然を装う。 「ふふ……一応授業時間ですよ」 『……でも、出たじゃん……』 「今は殆どの授業が文化祭の準備に当てられてて、暇だったからちょっと散歩してたんです」 『…………ふーん……』 「瑞希さんはお仕事じゃないんですか?」 『……休憩』 その拗ねたような声から、瑞希さんの心情なんて簡単に読み取れる。 「……そうですか、お疲れ様です。……ところで、俺に何か用事ですか?」 答えの分かっている問い掛けを瑞希さんに投げると、少しの間があって…… 『……なんで……あれから、一度も……連絡して来ないの……』 あれから……というのは、俺が瑞希さんを抱いた日のこと。 あの日から今日の今まで、こちらから連絡することも無ければ、瑞希さんから連絡が来ることも無かった。 「……連絡する用事も、特に無かったので」 『……っ連絡くらい、いくらでも……する用事、あるでしょ……』 ムキになる瑞希さんが可愛くて、もっと……もっと苛めたくなる。
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