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「はあああああっ!!」
五は風の爆発で横に逸らした。
十は紙一重でかわしてみせた。
十五は水の魔法で吹き飛ばした。
だが。
数発の『テリトリー』が翼の少女を打ち抜く。その右肩や脇腹へ直撃し、少女の肉を削いでいく。
「ぐ、ぅ……!!」
そして。
そもそも姫川楓は『テリトリー』を攻撃のために使ったわけではなかった。
その身が霞む。
翼の少女の懐深くへ飛び込んだ時と同じ高速移動によって、翼の少女の背後へ出現する。そう、『テリトリー』に対処させることで翼の少女の動きを止めている間に距離を詰めたのだ。
「吹き飛べ」
その拳に凝縮されるは必殺の閃光。
単純な魔力の塊が単純な暴力を出力する。
「しま───ッ!?」
その声は翼の少女のものだった。
だが、その声は背後を取られたことによるものではなかった。
背後から放たれる殺意に反応して、思わず力を使いすぎた。直後に絶対零度の一撃が炸裂する。水の魔法の応用、対象を氷の棺へ閉じ込める魔法が姫川楓を凍結していく。
ものの数秒で姫川楓は全身氷漬けにされた。
いくら何でもここまでされれば、しばらくは身動きを封じておけるだろうが……、
「何か誤解されていたみたいだから、話をしたかったんだけ、……ッ!?」
ビクッと翼の少女の肩が跳ね上がる。
莫大な……それこそ数十万の魔物の群れにも匹敵する力の波動が吹き荒れ、そして光の一撃が放たれる。
荷電粒子砲。
荷電粒子を粒子加速器によって亜光速まで加速し、解き放つビーム兵器。現代でも実用化は難しいとされている兵器ではあるが、その原理を魔法的に再現することで『彼女』は科学よりも先に荷電粒子砲の力を手に入れてみせた。
つまり九龍蜜花。
(友達に自分の知らない友達ができて、拗ねてしまう小学生理論が理由で)高校内の四大派閥は元より、姫川楓のお友達である第零騎士団団長などの『統一政府所属の怪物たち』さえも敵に回してみせた実力者である。
「ちょっ、待っ、話を……っ!!」
ゴァッ!! と屋上へ飛来してきた九龍蜜花はピストルのような形にした指先から荷電粒子砲を放っていた。真っ直ぐ翼の少女を襲うが、彼女は風の爆発や水の瞬間冷凍によって荷電粒子砲を受け止めてみせる。
「ふん」
トン、と軽い足音で屋上へ降り立った眼帯にド派手な紅のドレスの少女、九龍蜜花はそれはもう完全にブチ切れていた。
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