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2
「わんっ」
「わぁ~。お犬さんだ~」
赤髪赤目の少女、霧島牡丹は『色々あって』街並みの一部が瓦礫の山になったお陰でできた休日を使ってショッピングに来ていた。その帰り、両手いっぱいに戦利品が詰まった紙袋を持って歩いていると、綺麗な毛並みの犬と出会ったのだ。
……犬と呼ぶには随分と巨大な気もするが。
「かわいいの~。あ、あのっ、少しでいいんで撫でていい、かな……?」
「わんっ」
人の言葉が動物に通じるはずがないのに、なぜか返事をするように吠えて、すっと頭を差し出すお犬さん。
霧島牡丹はパァと顔中を歓喜に輝かせ、紙袋を路上に置き、お犬さんの毛並みを楽しむことに。
「わわっ、わぁ~。もふもふなの~」
3
その日、東雲幻水は高校の屋上で昼寝をしていた。別に学校に来たかったわけではなく、待ち合わせ場所にここが一番使いやすかったからだ。
そう、待ち合わせ。
いつもの四人で集まって、臨時の休みを満喫しようというわけだ。
そこに黒い穴が出現する。
東雲幻水の近くに何者かが降り立つ。
金色に輝く、腰まで伸びたストレートヘアー。
白磁のように透明感のある、白い肌。
よく似合ってるキャミソール型天使の衣装。
青空をそのまま溶かし込んだような、澄んだ瞳。
あくまでも健康的な色気を感じさせる、赤い赤い唇。
その背には天使を連想させる翼があり。
そして、隠れ巨乳な少女であった。
「ここは……?」
その少女はなぜか全身を返り血で染め上げていた。それこそ何かを殺し尽くした後のように。
そこへ。
屋上の扉を開け、純白の少女がやってくる。
姫川楓。
いつもの四人の一人にして、学校指定のセーラー服を白に染めた、白髪に赤目の魔法使いである。
「…………、」
彼女の実力は四大派閥の一角に『一人で』君臨するほど。どこかから反物質を持ち出す(?)といえば、彼女の規格外っぷりも分かるだろう。
そんな彼女の目には。
死んだように倒れる友達の近くに返り血塗れの何者かが立っているように見えた。
不可視の結界に守られた高校には部外者は入れないはずなのに、堂々と不法侵入している何者かが、彼女の友達を───
「ぶち殺すぞ」
直後に吹き荒れるは純白の閃光。
万物を消し飛ばす一撃が翼を生やした不審者へと殺到する。
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