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「つーことは、なんだ? おっさんは異世界に飛ばされた。そこは魔物や魔王が存在するファンタジー時空だった。で、七人の魔王を殺すことを条件に妻と子供が待つ元の世界とファンタジー時空を繋げてもらうよう神様と契約した。両方の世界を行き来することでファンタジー時空の愛人(?)と元の世界の家族の両方を幸せにしたい、と」
「ああ」
「そうかい」
俺は一つ頷く。
いやあ、これは酷い。この『時代』では始まりの魔女とかいう馬鹿女のせいで魔法が世界的に認識され、魔法のチート炸裂で昔の支配構造である国連は力づくで粉砕され、統一政府っていう全世界を統治する新たな枠組みが設立された。そのせいで簡単にいえば女(魔法は女しか使えないのだ)が偉いって感じになってやがる。なにせ偉くなるには魔法が強くないといけねえくらいだしな。ほら、騎士団は昔の警察や軍隊みたいな組織で、『魔女』は昔の政治家みたいな立場だが、どっちも魔法が凄い奴しかなれねえしな。そいつらが昔では考えられないほどの権力持ってるしさあ。
まあ、魔法は食糧問題だの温暖化だの『世界的問題』をことごとく粉砕するわ、魔法使いの上位陣にゃあ核兵器さえ通用しないって規格外っぷりだ。暴力一択で全世界を支配できたって不思議でもねえわな。
で、だ。
魔法は女しか使えねえから、男の人権なんざ地に落ちてる。ニュース見れば『女の罪を押し付けられた男の死刑が決定する内容が流れていたって、すべて分かっていて皆で無視する』くらいだしな。そういう慣習が浸透してやがる。
だから、まあ、うん。
愛する家族だのファンタジー時空で出来た愛人だの、そーゆー『逃避』するのも仕方ねえよなあ。
「おっさん、大変だったんだな、うんうん」
つーかおっさんが降ってきた『穴』未だに塞がってねえんだが、どうすりゃいいんだ、あれ?
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