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2
「もふもふなの~」
「わんっ」
3
ゴッ!! という衝撃が走り抜ける。
怒りのままに放った純白の閃光が翼を生やした不審者の魔法で横にズラされたのだ。
風の魔法。
圧縮した風の塊を閃光の右側へぶつけ、爆発させることで莫大な衝撃波を生み出し、魔力の塊である閃光を逸らしたのだ。
「いきなりなにするんですかっ」
「…………、」
姫川楓の目が微かに細められる。
その直後───彼女の身体がブレたかと思えば、不審者の懐深くへ『出現』したのだ。
(転移……じゃないっ。単純な速度で……!?)
「許さない」
その拳に純白の閃光が集う。
殺意のままに解き放つ。
「絶対に許さない!!」
それはまさに閃光のごとき一撃であった。
魔法的に加速された拳が吸い込まれるように翼を生やした少女の胸板へと叩き込まれる。
バジャア!! という異音。
寸前に展開された魔力によって具現・強化された水の塊が姫川楓の拳を受け止めた……のだが、そんなもの関係なく華奢な拳は振り抜かれた。四方八方へ爆散した水の飛沫を撒き散らしながら、正確に不審者の身体を打ち抜いたのだ。
「ぶ……っ!?」
ガッ、ガガガ!! と屋上が削り取られていく。打撃によって吹き飛ばされた不審者が具現した水の双剣(のような形をしたもの)を床に突き刺し、何とか屋上から落ちることだけは防いだのだ。
「よく分からないですけど」
水の双剣を霧散させ、手の甲で口の端から流れた血を拭う翼の少女。その目が獰猛に光る。
「やるっていうなら、相手になるわよ」
「勝負になるとは思えない」
「何言ってるんですか」
翼を生やした少女が姫川楓を指差す。
正確にはその首元を。
「その首、もらっても良かったんですけど?」
その首元には。
一筋の切り傷があった。
「…………、」
その華奢な手で首を触り、そこについた赤い液体を無感動な瞳で眺め、(あくまで見た目は)無表情を貫く姫川楓の口が開く。
表情に反して、どこまでも憎悪に満ちた声が外界へ放たれる。
「この力で幻水を苛めたんだ。そうなんだ。はは、うん。絶対に殺そう」
「え? ちょっとそれって───」
「絶対に! ぶち殺すッ!!」
翼の少女と純白の少女。
類い稀なる魔法使いたちの激闘は始まったばかり。
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