三、過ぎた時間のジクソーパズル

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「こっちで買い直す予定だし、向こうは家具付きのマンションだったから碌な荷物はない。手続きの方が時間食った」 「ふうん」 数分もしないで、エメラルドマウンテンの甘い豆の香りが漂ってくる。 甘みが強いこの珈琲が一番好きかもしれない。 「昨日も思ったが、今日もネイルが綺麗だ」 素直な感想に思わず目をパチパチしてしまった。 彼がこんなに素直に言ってくれるのは初めてかもしれない。 だったら私も素直にならないと。 からからに喉の中が乾いていく中、指先を撫でながら言う。 「慶斗に会うと思ったら、気合い入っちゃった」 そう言っておきながらも、口から心臓が飛び出しそうなほど身体が熱い。 動揺し過ぎている。 「もう、どっか行かないの?」 珈琲が運ばれてきたので会釈したけれど、震えて上手に珈琲が持てない。 「いかない。こっちで新人に指導する立場になる。今度は俺が送り出す番だから」 「へえ」 「もうどこにも行かないし。離れるつもりもない」
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