三、過ぎた時間のジクソーパズル

19/23
441人が本棚に入れています
本棚に追加
/83ページ
にやにや聞くと、当たり前だろと目も見ずに言う。 悔しいから、今度もまた犯人の名前を言ってしまおうと誓った。 「酔った」 レストランから出て第一声にそう彼が言う。 「そりゃああれだけ飲んだらね。顔には相変わらず出ないよね」 ワインとシャンパンを空けても、平然とした顔でスタスタ歩いている。 それなのに酔ったと彼は言う。 「美春は?」 手を繋ぎ、おでこをコツンと会わせながら彼が言う。 「――美春は?」 その言葉と、熱い吐息で察してしまった、 「酔ったかもしれない」 曖昧に言い放つと、彼が繋いだ手の力を少しだけ強めた。 「今度は、ちゃんと朝まで覚えとけよ」
/83ページ

最初のコメントを投稿しよう!