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にやにや聞くと、当たり前だろと目も見ずに言う。
悔しいから、今度もまた犯人の名前を言ってしまおうと誓った。
「酔った」
レストランから出て第一声にそう彼が言う。
「そりゃああれだけ飲んだらね。顔には相変わらず出ないよね」
ワインとシャンパンを空けても、平然とした顔でスタスタ歩いている。
それなのに酔ったと彼は言う。
「美春は?」
手を繋ぎ、おでこをコツンと会わせながら彼が言う。
「――美春は?」
その言葉と、熱い吐息で察してしまった、
「酔ったかもしれない」
曖昧に言い放つと、彼が繋いだ手の力を少しだけ強めた。
「今度は、ちゃんと朝まで覚えとけよ」
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