三、過ぎた時間のジクソーパズル

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言葉なんて必要ないと強く抱きしめあった夜が過ぎて、珈琲の香りが鼻を掠める朝が来た。 なんで珈琲? そう思ってごろりと寝返りを打つと、隣に慶斗が眠っていた。 「――っ」 じわりと目に涙が滲んだのは、悲しいからじゃない。 本当に隣に彼が居るからだ。 離れていた時間が、案外私の中で強がっていただけで寂しい空白の時間だったらしい。 理想は、そう。 こんな風に朝、同じベッドで、隣で彼が眠ってくれているということだ。 思わず胸に抱きついたら、むにゃむにゃと眠たそうな顔で抱き返してくれた。 「おはよう、美春」 「うん。おはよう」 ポンポンと頭を撫でられて、猫の様に擦り寄る。 「珈琲の良い匂いがする」
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