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昨日、引っ越したばかりの慶斗の家に、雪崩込むように二人で上がった。
よく見れば、壁に数箱の段ボールと、真新しい四人掛けのテーブル、そしてベットという閑散とした部屋だった。
「ん。美春は俺のバイト先の珈琲が好きだったろ。向こうで練習してたんだ。昨日も寝た後にちょっとだけ練習した」
置き上がり、ジーンズを履くと段ボールから数種類の珈琲豆を取り出した。
どうやら珈琲を入れてくれるらしい。
「服、借りて良い?」
「テレビの横の段ボール」
短いレスポンスの中、居心地が良いのは二人を包む珈琲の香りが甘い媚薬のように胸を高鳴らせるからかもしれない。
付き合っていた時、いつも慶斗のTシャツを借りて朝はぼーっとしてたのを思い出した。
案の定、段ボールの一番上にあった青いシャツは、着たらワンピースのようになった。
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