三、過ぎた時間のジクソーパズル

23/23
439人が本棚に入れています
本棚に追加
/83ページ
それを着て椅子に座ると、甘みが強い珈琲の香りがする。 昨日、私が飲んだ珈琲と同じだ。 好きだと覚えていてくれたんだね。 コトリとテーブルに置かれた珈琲を、一緒に飲みながら暫く無言が続いたが、一口飲んだ彼はカップを置き、私を見た。 そのまま彼は私に簡潔に言った。 「結婚しようか」 両手でマグカップを持っていた私の手は止まる。 「や――、違うか。結婚してください、か」 「ぷぷぷぷ」 頭を掻く彼の仕草が可愛くて私は思わず笑ってしまった。 「はい。よろしくお願いします」 そう言うと、熱々の珈琲を全て飲み干した。
/83ページ

最初のコメントを投稿しよう!